文系が昼休みに勉強して統計検定1級を受ける⑳(第3章問7)

データ解析のための数理統計入門

ディリクレ分布とその応用:確率変数の分布を求める

ディリクレ分布は、確率分布の中でも特に多変量データを扱う際に便利な分布です。この分布は、確率単体(全ての成分が正で、その和が1になる領域)上で定義され、機械学習やベイズ推定、自然言語処理などの分野で広く用いられています。
特に、カテゴリカルデータのモデリングベイズ推定における応用が顕著です。

カテゴリカル分布の事前分布 応用例:

  • ベイズ分類器:カテゴリカルデータのクラス確率を推定。
  • 自然言語処理:トピックモデル(例:LDA)で単語分布の事前分布として使用。

 

潜在ディリクレ配分法 (LDA) 応用例:

  • ニュース記事の分類:各記事がどのトピックに関連しているかを解析。
  • 推薦システム:ユーザーの嗜好をトピックとしてモデル化。

混合分布モデル 応用例:

  • 画像認識:画像ピクセルをクラスタリングしてセグメンテーションを行う。
  • ユーザープロファイル:マーケティングにおいて、ユーザーを異なるカテゴリに分類。

今回は、確率変数 X,Y,Z がディリクレ分布に従う場合の特性を、以下のような問題を通じて解説します。

問題設定

確率変数 X,Y,Zの同時確率密度関数は、次のようなディリクレ分布に従うとします:

 

条件は下記の通りです。
0<x,y,z<1
0 < x, y, z < 1
,
a,b,c>0

この設定に基づき、下記を考えます。

(1) V=X+Yの分布

まず、V=X+Yと置くと、残りの変数は Z=1−V となります。
このとき 0<V<1 の範囲をとります。
ディリクレ分布の特性上、部分和 V=X+Y の分布はベータ分布に従います:

V∼Beta(a+b,c)

この結果は、ディリクレ分布が「部分和の分布」と「条件付き分布」に分解できる性質によるものです。

(2) T=Y, W=X/1−Y​ の周辺分布と独立性

の周辺分布
ディリクレ分布の周辺分布の性質から、T=Y の分布もベータ分布に従います:T∼Beta(b,a+c)

の分布
条件付き分布 X∣Y=yX | Y = y を考えると、ディリクレ分布の性質から XX の条件付き分布は次のようにスケールされたベータ分布になります:
X(Y=y)Beta(a,c)
ここで、変数変換を適用すると、Wの分布も同じくベータ分布に従うことがわかります:W∼Beta(a,c)

結論

今回の結果をまとめると以下の通りです:

  1. V=X+Yの分布はベータ分布 Beta(a+b,c) に従う。
  2. T=Yの分布はベータ分布 Beta(b,a+c) に従う。
  3. W=X/1−Y の分布はベータ分布 Beta(a,c) に従う。
  4. TW は独立である。

ディリクレ分布とその関連する分布(ベータ分布)の性質は、確率論や統計学において非常に重要です。特に、多変量データの解析やベイズモデリングなど応用範囲は広く、今回の例はその基本的な性質を示す良い例です。

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